6月に開幕するロシアワールドカップに向けて、各国代表チームは着々と準備を進めています。
ブラジル代表はすでに本大会に登録できる23人のうちの15人を発表し、彼らの準備が順調であるかを誇示しています。
一方で同じく南米大陸のアルゼンチン代表は…
一向に組織の熟成が進みません。
なぜなら、予選を圧倒的な強さで独走したブラジルに対して、アルゼンチン代表は不調による度重なる監督交代によってメンバーを固定して戦うことができなかったからです。
アルゼンチン代表はワールドカップをどのようなフォーメーションで戦うのでしょうか?
今回はアルゼンチン代表のワールドカップのフォーメーションについてお伝えします。
何がアルゼンチン代表の熟成を阻んだのか?
ロシアワールドカップ予選では、今回も大国が敗退する波乱が起こりました。
オランダ、イタリアという伝統国が敗退の憂き目に遭い、コートジボワールやアメリカ、チリといったここ数回のワールドカップでは常連だったチームすらもロシアで開催されら本大会には出場することができません。
そして、アルゼンチン代表も彼らと同じく敗退する可能性がありました。
なぜなら、ワールドカップ予選も残すところ最終節のみとなった段階で、アルゼンチン代表は予選敗退となる位に位置していたからです。
苦戦の過程で、アルゼンチン代表の監督は次々と首がすげ替えられました。
ヘラルド・マルティーノが2016年夏に辞任し、その後エドガウ・バウサは内容も結果も出せず解任、現在はホルヘ・サンパオリ監督がチームを指揮しています。
こうした監督交代がフォーメーションの確立や組織の熟成を阻んだのは言うまでとありません。
最終節のエクアドル戦でリオネル・メッシに神が降り、ハットトリックの大活躍。
この絶対エースのパフォーマンスにより、アルゼンチン代表はなんとかワールドカップという港にたどり着きました。
上述したように、フォーメーションの確立や組織の熟成が思うように進まなかったのは、監督が次々と交代させられた影響は確実にあるでしょう。
選手たちのモチベーションにも大きな問題がありました。
2014年のブラジルワールドカップ、2015年、2016年のコパアメリカの3大会全てを準優勝で終えたアルゼンチン代表のメンバーは疲弊と失望で消耗しきっていました。
メッシがアルゼンチン代表からの引退を宣言し、その後撤回したようにチームは大きな混乱をきたしました。
絶対的なエースを失いうる状況に陥ったのも、この予選でアルゼンチン代表が苦戦した理由です。
そこで、サンパオリがアルゼンチン代表に施したのは、単純明解な策だったのです…
いかにしてサンパオリはアルゼンチン代表を立て直したのか?
ワールドカップ予選途中にアルゼンチン代表監督に就任したサンパオリが施した策は、非常に単純明解です。
その策とは…
『メッシと気心の知れた仲間達でチームを作る』
というものです。
気難しい性格として知られるメッシですが、アルゼンチン代表の中でも一部のメンバーとは非常に良好な関係性を築いています。
アルゼンチン代表としてデビューしたのが2005年で既に13年を過ごしており、長くチームで苦楽を共にしたメンバーとは特に固い絆で結ばれています。
メッシにとっては一番の理解者であるマスチェラーノ、ピッチ上で最も深いパートナーシップを築くディ・マリアを筆頭にロメロ、オタメンディ、ファシオ、ビリア、イグアイン、アグエロは“メッシ・ファミリー”の一員です。
サンパオリは太り過ぎという問題を抱えていたイグアインを除く、メッシ・ファミリーを中心にワールドカップ予選で戦う算段を立てました。
そして、出来上がったフォーメーションが
3-4-3のフォーメーションです。
メッシを3トップの右という最も慣れ親しんだポジションに配置し、アグエロ、ディ・マリアと共に前線を形成させました。
ミッドフィールドは2人のセンターハーフと高い位置で前線をサポートする両ウイングバックで形成されるフラットな構成に。
メッシにボールを供給する役割はアテネ・オリンピックからの友人であるビリアに託し、マスチェラーノを弱体化が懸念されていた最終ラインにコンバートしています。
そのマスチェラーノをリベロに置く、3バックのフォーメーションでゴール前を固めます。

結果的にこの極端な前輪駆動のフォーメーションはメッシの能力を最大限に引き出し、先のエクアドル戦の超人的なパフォーマンスを導きました。
試合ごとに異なるフォーメーションを使い分けるサンパオリだけに今後も流動的な人選が行われる可能性が高いですが、ひとまずはワールドカップ予選の終盤で重用された3-4-3のフォーメーションがアルゼンチン代表の『原型』となることは間違いありません。
問題はワールドカップまでの残された時間で、このフォーメーションをどのように深化させるか、です…
コレがワールドカップに臨むアルゼンチン代表フォーメーション!
サンパオリ監督はメッシをチームの軸に置くと前提で、ワールドカップ本大会に向けて急ピッチで準備を進めています。
間もなくアルゼンチン・リーグが開幕することもあり、あらゆる年齢の選手に門戸を開いて選手層の拡充に執心しています。
それでは、アルゼンチン代表のフォーメーションをポジション別にチェックしていきましょう。
アルゼンチン代表フォーメーションポジション別解剖①DF&GK
ゴールキーパーの前に3人のセンターバックを置くのがアルゼンチン代表のフォーメーションの基本形です。
〈GK〉
セルヒオ・ロメロ
〈DF〉
ガブリエル・メルカド
ハビエル・マスチェラーノ
ニコラス・オタメンディ
ゴールキーパーは2010年の南アフリカ大会からレギュラーを務めるロメロが不動の存在として君臨しています。
所属するマンチェスター・ユナイテッドでは控えに甘んじていますが、ワールドカップのような国際舞台では光輝くベテラン守護神です。
その前に並ぶ3人のセンターバックは、右からメルカド、マスチェラーノ、オタメンディという構成です。
この3バックのフォーメーションの強みは、3人のセンターバックが互いの弱みを補完しあえる点にあります。
対人プレーに強さを見せるオタメンディとメルカドを統率力のあるマスチェラーノがコントロールし、そのマスチェラーノに欠ける高さという不安を脇の2人がカバーするという構図です。
空中戦に強みがあるオタメンディとメルカドのもう一つの仕事が、セットプレー時のターゲットマンとなることです。
得点力不足に苦しんだワールドカップ予選では2人で3ゴールを挙げています。
ワールドカップ本大会では、ビッグチャンスに恵まれる可能性が低く、セットプレーは非常に重要なポイントになります。
アルゼンチン代表の前線は小柄な軽量級が多いため、尚更この2人にかかる期待は大きくなります。
アルゼンチン代表フォーメーションポジション別解剖②MF
最終ラインの前に2人の守備的ミッドフィルダーを置き、両ウイングバックがタッチライン際を広くカバーするのが、このフォーメーションの特徴です。
〈MF〉
エドゥアルド・サルビオ
エベル・バネガ
ルーカス・ビリア
マルコス・アクーニャ
中盤センターはより守備的な役割を担うビリアと司令塔タイプのバネガという構成ですが、ワールドカップを直前に控えた現時点でも明確な序列は決まっておらず、どのようなメンバー構成で本大会に臨むかはわかりません。
ビリアはマスチェラーノのコンバートによって消去法的にお鉢が回ってきた感があり、列強の守備的ミッドフィルダーとの比較で大きく見劣りします。
バネガはメッシにボールを供給する役割を期待されて抜擢されましたが、スピード感のある展開では持ち味が発揮できないことをインテルで証明してしまいました。

今後の状況次第ではより強靭でタフなギド・ピサーロやエンゾ・ペレスがレギュラーを務める可能性があるかもしれません。
やり繰りが難しいのはサイドにも言えます。
右ウイングバックの主戦力のサルビオ、左のアクーニャは共にワールドクラスの領域には到底及ばず、大きな不安要素となりえるでしょう。
サンパオリは若手やベテランにも門戸を開き、戦力の拡充に注力しています。
2017年末には両ウイングバックを排した3-3-1-3のフォーメーションを実験的に試しており、ワールドカップ直前で変革が起こる可能性があります。
アルゼンチン代表の”もう一つのフォーメーション”3-3-1-3″とは?
アルゼンチン代表が実験的に試したもう一つのフォーメーション『3-3-1-3』。
現代サッカーではほとんどお目にかかることがなくなったフォーメーションです。
古くは2002年の日韓ワールドカップでアルゼンチン代表を率いた奇才マルセロ・ビエルサが採用していたフォーメーションです。
何を隠そうサンパオリはそのビエルサから指導者として育てられ、枠組みにとらわれない独創的な采配はまさしく師匠譲りです。
ビエルサが中盤にハビエル・サネッティやファン・パブロ・ソリンといったサイドバック的な選手を起用したのに対して、サンパオリが用いた3-3-1-3は中盤のサイドを空位とし、全てセンターハーフタイプの選手を起用したことです。
ビリア、ピサーロ、バネガを最終ラインの前に置き、その前方にメッシを配しました。
あまりにも中央に常駐する選手が多く『渋滞』を招きましたが、メッシを10番として起用できるメリットがあります。
メッシの後方に多くの選手を置くことができるので、ビルドアップの負担が減り、この絶対的なエースへのボールの供給が容易になるという効果を望むことができるでしょう。
アルゼンチン代表フォーメーションポジション別解剖③FW
アルゼンチン代表ではトップ下としてプレーする機会が多かったメッシを、バルセロナで慣れ親しんだ3トップの右に置くフォーメーションが基本形になりつつあります。
やはり、メッシの能力を最大限に活かすことを最も重要視していることがわかります。
〈FW〉
リオネル・メッシ
セルヒオ・アグエロ
アンヘル・ディ・マリア
アグエロを頂点に置き、その後方にメッシ、ディ・マリアを置くのが現在のアルゼンチン代表の前線の基本形です。
ミドルサードからファイナルサードを自由に動き回ってボールに関与するメッシには攻撃の全権が与えられています。
ディ・マリアはよりワイドな位置でプレーをスタートさせながら、得意のドリブルと正確なクロスでチャンスメイクします。
アグエロは攻撃の最終局面を担いますが、ワールドカップ予選では思ったように得点を重ねることができませんでした。
ワールドカップ本大会での落選は考えづらいですが、ダリオ・ベネデット、マウロ・イカルディ、ゴンサロ・イグアインといったバックアッパーにお鉢が回ってくる可能性があるかもしれません。
主戦の3人はいずれもアルゼンチン代表としてのキャップ数が80を超えており、経験値は十分以上。
連携も十分に確立されており、後方からの支援体制さえ整えば、ワールドカップ本大会でも爆発が期待できるかもしれません。
ただし、ワールドカップ予選でもそうだったように、メッシが健康体でいることが前提となります。
今回はアルゼンチン代表のワールドカップでのフォーメーションについてお伝えしました。
残り4ヶ月を切ったワールドカップ本大会で、彼らはどのようなプレーを見せてくれるのでしょうか?
今大会は、恐らくメッシにとって最後のワールドカップになるでしょう。
歴代最高の選手として史に名を残すにはラストチャンスとなるでしょう。
メッシのアルゼンチン代表としてのストーリーはどのような結末を迎えるのでしょうか…?
そして、下のリンクではアルゼンチン代表のワールドカップにおける主要メンバーについてお伝えしています。
この記事を読めば、彼らがどのようなチームでワールドカップに挑もうとしているのか、知ることができるでしょう。

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