レアルマドリードの指揮官、ジネディーヌ・ジダンは監督としてもその能力をいかんなく発揮しています。
まだ監督としての生活が2シーズンにも満たないこの新人監督はなんと…
チャンピオンズリーグ連覇という前人未到の記録に挑戦しようとしています。
監督としてのジダンの能力は一体どう評価すべきなのでしょうか?
既にジダンの監督としての才能にほれ込んだレアルマドリードが高年俸を用意して契約延長を持ちかけていると噂されています。
今回はジダンの監督としての戦術、年俸をお伝えします。
いかにしてジダンは監督としてのキャリアを築いたか?
2006年に衝撃の幕引きで現役生活から退いた元フランス代表ジネディーヌ・ジダン。
ワールドカップの決勝でイタリア代表マルコ・マテラッツィに頭突きして退場し、この大会をもってしての現役引退を表明していたジダンは選手生活を終えました。
フランスのカンヌ、ボルドー、イタリアのユベントス、そしてレアルマドリードで選手としてのキャリアを築きました。
レアルマドリードに移籍した経緯はイタリアの戦術に対する決まりごとが非常に多い文化に嫌気がさしていたからだと言われています。
戦術至上主義のイタリアを後にし、高額の年俸と自由な戦術を求めてレアルマドリードに上陸しました。
レアルマドリードでは戦術に縛られることなく自由な環境の中で、持ち前のファンタジーを発揮しました。
レアルマドリードに移籍したときには既に下り坂に差し掛かっていましたが、ジダンのおかげでレアルマドリードは9度目のチャンピオンズリーグのタイトルを獲得しています。
監督としては、2011-2013シーズンにジョゼ・モウリーニョの下でユースチームの指揮官を、2013-2014シーズンにカルロ・アンチェロッティ政権下でアシスタントを任されたことがキャリアの始まりでした。
そして、2015-2016シーズンの途中にラファエル・ベニテス退任に伴い、監督としてのお鉢が回ってきたのです。
結果的にレアルマドリードの指揮官として2シーズンを経過した今、最も監督としての影響を受けたのはアンチェロッティだったといえるでしょう。
ジダンが特筆に値するのは、2015-2016シーズンに続き、2016-2017シーズンでもレアルマドリードをチャンピオンズリーグの決勝の舞台に導いていることです。
2015-2016シーズンはアトレティコを破り載冠を果たし、2016-2017シーズンは6月3日に連覇をかけて古巣ユベントスと対戦します。
2015-2016シーズンのチャンピオンズリーグ制覇は1年目の新人監督としてはバルセロナを率いた2008-2009シーズンのジョゼップ・グアルディオラのみの快挙です。
そして2016-2017にチャンピオンズリーグの連覇を達成した場合、それはクラブとしても監督としても前人未到の記録となります。
監督ジダンはそんな大偉業に挑もうとしているのです…
しかし、一方で監督としてのジダンにはこのような評価も聞こえてきます。
「本当に名将と言えるのか?」
既に名将としての評価や年俸も手にしているジダンですが、本当に稀代の指揮官としての評価を与えてよいものなのでしょうか?
監督としてのジダンはどんなタイプか?
監督としてのジダンは規律よりも自由と主体性を重んじる指揮官である。
細かな戦術に口を出さず、選手達のモチベーションとそれに伴う主体性を引きだして、最大のパフォーマンスを発揮させるのが、彼の流儀なのです。
スター気質の高いレアルマドリードではそのマネジメントが功を奏し、高い成果を導いています。
2016-2017シーズンはリーガ・エスパニョーラの覇権と、チャンピオンズリーグの連覇に手がかかっています。
ジダンの人身掌握術は2年目とは思えないレベルに達しています…
監督としてのジダンへの考察①人身掌握
自身が高年俸を受け取り、世界中からの注目を集めた選手だったこともあり、レアルマドリードのようなスーパースターが集まるチームで、選手の心情を理解し、最大のパフォーマンスを発揮させるセンスにおいてはジダンは特筆したレベルにあります。
同じく高年俸を受け取る稀代のスーパースター、クリスティアーノロナウドが全試合の出場を希望する一方で、ジダンは休養の重要性を説き、屈服させました。
また、首脳陣との諍いが絶えなかったキャプテンのセルヒオ・ラモスもプレーへの集中と落ち着きを手にしています。
また、2016-2017シーズンはコロンビア代表ハメス・ロドリゲス、スペイン代表アルバロ・モラタなどがベンチを暖めましたが、ジダンは彼らにも出番を与えてモチベーションを喚起しました。
さらに、ジダンの下では若手も台頭。
2016-2017シーズンはブラジル代表カゼミーロ、フランス代表ラファエル・ヴァラン、スペイン代表ナチョが完全に一本立ち、一年目のMFマルコ・アセンシオも期待に違わぬ活躍を見せています。
選手との衝突の噂や首脳陣との軋轢もなく、難易度の高いバランスの維持に成功しています。
また、モウリーニョ監督が多いに悩まされたマスコミとの関係も非常に良好で、誰に対しても常に真摯で公平、スマートな振る舞いを見せるジダンには、攻撃的に報道するマスコミが少なく、クラブとしてのイメージアップにも貢献しています。
こうした周囲との円滑な関係を築きいたという点においてもジダンの監督としての功績は計り知れないものがあります…
しかし、ジダンのマネジメントの成功は、長期間にわたって効果的であるとは思われていませんでした…
服従は「あの男」への反発だった?
2015-2016シーズンの途中にレアルマドリードの監督に就任したジダン。
それまで、レアルマドリードの指揮官はスペイン人のラファエル・ベニテスが勤めていました。

ベニテスは超守備的なカウンター戦術を採用し、またその戦術をチームに浸透させるまでのアプローチも選手に反感を買っていました。
選手のポジショニングひとつとって、細かに指示を与えるベニテスのスタイルに選手達は強く反発していました。
「優等生」として知られるクロアチア代表ルカ・モドリッチでさえもベニテスの戦術や方針はチームに合っていなかったとして『退任はポジティブなニュースだ』と発言したほどです。
チームの戦術を司るコンダクターであるモドリッチにはベニテスの戦術がいかにレアルマドリードにあっていなかったのかが、わかっていたのでしょう。
ちなみにレアルマドリードはベニテスの退任後も10億円近いといわれる年俸を払い続けたことで、批判されました。
ベニテスに対して強い反発を示していたレアルマドリードの選手達は新たに監督に就任したジダンを諸手をあげて歓迎しました。
ベニテスが細かな戦術で選手達から反発を買っていたことを知っていたジダンは、選手達に自由を与えてモチベーションを引き出しました。
そして、何とか破綻寸前だったチームを本調子に引き戻したのです。
それでも、選手達が本来のパフォーマンスを取りもどしたのは、ジダンの功績というよりも、ベニテスからの開放による一過性の発熱だったと思われていました。
そのため、ジダンの人身掌握術は2016-2017シーズン以降は影響力を落すのではないかと推測されていたのです。
しかし、2016-2017シーズンが最終盤にさしかかったこの5月も、レアルマドリードの選手達はモチベーションを落すことなく、ジダン政権の下で奮闘しています。
そして、5シーズンぶりのリーガ・エスパニョーラ制覇と史上初のチャンピオンズリーグ連覇に挑もうとしています。
ただし、それでもジダンが未だに歴史的な名将とよばれるには課題もあるのです…
監督としてのジダンへの考察②戦術
戦術はジダンの大きな課題の一つです。
攻守が一体化したモダン戦術でサッカー界を席巻したグァルディオラのバルセロナ。
そしてハイラインプレスで高いタレント力を有さずにチャンピオンズリーグの決勝にまで進出したクロップのドルトムント。
クロップのプレス戦術をハイラインとローラインに配したシメオネのアトレティコ。
ここ10年弱で若い指揮官が新たな戦術とともに台頭しました。
しかし、ジダンは確固たる戦術を有していません。
これは監督としてのジダンの大きな課題となるでしょう。
ジダンが確固たる戦術を築けないのは、レアルマドリードというチームのメンバー構成に問題があるのか、それとも戦術構築能力がかけているのかはまだわかりません。
監督としてのジダンを考察する上ではこの点をもうしばらく見守る必要性があるように感じます。
DFラインと中盤にはポゼッションサッカーを可能とするメンバーがいるのに対して、前線にはガレス・ベイル、クリスティアーノロナウドというカウンター戦術への適正が非常に高い選手で構成されており、チグハグな印象が残っています。
個々が高いタレント力を持つレアルマドリードはその問題が表面化していませんが、この点はチームとして修正の可能性が多いにあるように見えます。
ジダンが取り組んでいるのが、従来の4-3-3のフォーメーションから4-4-2の戦術を採用することです。
ベンゼマ、ベイル、クリスティアーノロナウドのBBCから怪我が多いベイルを外し、よりテクニックが高いMFイスコやアセンシオを起用する機会が増えています。
こうすることで中盤の構成力を高めようとしているのです。
しかし、この戦術が定着するにはもう少し時間がかかりそうな状況です。
監督ジダンの模範&反面教師
ここまでの2シーズン弱のジダンの監督生活で明らかに模範としている指揮官がいます。
ジダンは彼らの行いを教訓にして、監督として成長しています。
それは一体誰なのでしょうか?
監督ジダンの模範①アンチェロッティ
上述したように、ジダンは監督として戦術、規律面の多くでアンチェロッティの影響を受けています。
アンチェロッティはミラン、チェルシー、パリ・サンジェルマンといったメガクラブで監督を務めた経歴を持っています。
アンチェロッティが監督を務めたチームはいずれもスター選手が多数在籍するのはもちろんのこと、発言権の強い首脳陣を持った、非常にマネジメントの難しいチームです。
アンチェロッティはチームとクラブとの間で互いの意見を取り入れるバランスを保ちながら、結果を残して来ました。
厳しい戦術や規律を課さず、選手とは上司というより志を共にする仲間として接しました。
そうした緩やかな関係が選手から信頼を集め、自立と主体性が確立されたのです。
現在はドイツのバイエルンで指揮を執っていますが、アンチェロッティが未だに一流監督として高額の年俸を受け取っているのは、こうした経験を持っているからです。
ジダンも基本的な振る舞いはアンチェロッティとはほとんど同じです。
アンチェロッティに対してやや欠けているのが、限られた人材でベストの戦術をチョイスする調整能力。

アンチェロッティが4-3-1-2、4-3-3、4-2-3-1などの多様な戦術を駆使してベストパフォーマンスを引き出そうとするのに対し、ジダンはメンタル的なアプローチに依存しがちなように見えます。
監督ジダンの模範②モウリーニョ
現在マンチェスターユナイテッドで監督を務めるモウリーニョもジダンの元上司にあたる存在です。
監督としては未だに最高の評価と年俸を受け取る名将です。
モウリーニョがジダンに重要性を説いたのは、やはり彼自身が最も重要視するディフェンス面です。
ジダンがボール支配をあっさりと放棄してカウンター戦術をチョイスする場面が時々見受けられるのは、明らかにモウリーニョの影響でしょう。
また選手に闘志を注入する方法もモウリーニョ譲り。
モウリーニョはその守備意識の高さが相手を破壊するレベルにまで達してしまい、非常にネガティヴな印象を与えてしまったこともありましたが、ジダンはその辺りのメンタルコントロールは配慮しているようです。
一方で、ジダンには反面教師にしてきた監督もいます…
監督ジダンの反面教師①ベニテス
上述した通り、ベニテスはジダンが監督として反面教師にしてきた監督の1人です。
神経質で自分が思うようにならないと気が済まないベニテスは選手を駒のように扱い、厳しい戦術でがんじがらめにしようと考えました。
結果的にチームからの反発を買い、2015-2016シーズン前半のベニテス政権はほぼ完全に崩壊状態でした。
バルセロナとのクラシコも屈辱的なスコアで惨敗しています。
ベニテスのコントロールが難しかったのは、元々下部組織の監督だったこともあり、非常にレアルマドリードへの、そしてペレス会長への忠誠心が高かったこと。
残した実績の割に年俸が高かったこともありますが、ペレス会長からの寵愛を受けるベイルの代理人の意向を汲んで、このウェールズ代表を無理やりトップ下で起用しようとしました。
チームにはハメス・ロドリゲスやイスコといったトップ下の逸材が揃っていたにも関わらずです…
チームには自由と緩やかな規律、そして主体性を求めているのは明らかにベニテスと対象的です。
監督ジダンの反面教師②ドメネク
2004年から2010年までフランス代表の監督として指揮を執ったレイモン・ドメネク。
この男はフランス代表の歴史の中で最低の監督として知られています…
2006年のワールドカップではチームを決勝まで導きましたが、これはジダンやクロード・マケレレ、リリアン・テュラムらリーダー格が牽引したからです。
その後の2008年のユーロ、2010年の南アフリカワールドカップではグループリーグで惨敗するという憂き目にあっています。
本来なら2008年のユーロの終了後に解任となる予定だったようですが、2010年まで支払い義務が残ったドメネクの年俸と新監督の契約金や年俸を出し渋ったFFF(フランスサッカー協会)が契約の継続を決めたのです。
占星術を使った選手選考、能力を持った選手を活用するのではなく、自分の好みの選手だけでグループを固めようとするなど、とにかく奇行が目立ちました。
チームの勝利は自分の手柄、敗戦は選手の責任とするなどとにかくチームとの溝が全く埋まりませんでした。
2010年の南アフリカワールドカップで、フランス代表のメンバーが起こした造反『ナイスナの悲劇』はフランス代表にいまだに影を落とす黒歴史です…
ドメネクを反面教師としたジダンは、あくまで主役は選手たちだと一歩引いた立場でチームをコントロールしようとしています。
不要な論争とも付き合わず、一貫して冷静で物腰の柔らかい姿勢を見せています。
既に一流並みの年俸!?ジダンがあっという間に高給取りになった理由!
ジダンの2016年の監督就任当初の年俸は3億円と言われています。
レアルマドリードなので非常に高額な年俸の支払いが可能ですが、新米監督としてはかなり高年俸と言えるでしょう…
ただし、契約期間が2017年6月までだったので、実働1年半で貰える年俸は6億。
ベニテスに3年契約で年俸10億円を支払うことになっていたレアルマドリードにとっては小さい額なのですが…
しかし、上述の通り2015-2016シーズンのチャンピオンズリーグで優勝すると契約延長と共に倍となる年俸を勝ち取ったと言われています。
マンチェスターシティから約30億円の年俸を貰っていると言われるグアルディオラや、同じくマンチェスターユナイテッドから25億円の年俸を貰っているモウリーニョに比べるとまだまだ小さい年俸ではありますが、今後のジダンの監督としての成長を考慮すると、年俸はまだまだ伸びる可能性がありそうです。
しかも、ジダンはリーガエスパニョーラの覇権とチャンピオンズリーグの連覇に王手をかけています。
見事二冠を達成すれば、さらなる契約延長、そして年俸の増額が締結されるでしょう。
既に契約延長で合意に至ったと言われており、2020年までで年俸は10億近くまで上昇するようです。
この年俸はジダンの現役時代の年俸に匹敵する金額です。そして、ジダンの監督としての師匠とも言えるアンチェロッティがレアルマドリード時代に受け取っていた年俸に匹敵します。
新人監督とは思えないマネジメントスキルを発揮するジダン監督ですが、やはりその能力は高額年俸を支払うほどの価値があったということなのでしょう。
今回はレアルマドリードの指揮官、ジダンの監督としての戦術、年俸についてお伝えしました。
もしかしたら、いずれジダンが監督としても世界最高クラスの評価や年俸を受け取る日がやってくるかもしれません。
これはかつてのベッケンバウアーやクライフが選手としてだけではなく、監督としても能力をいかんなく発揮した姿と重なります。
そして、下のリンクでは2016-2017シーズンのレアルマドリードの主要フォーメーションとメンバーについてお伝えしています。
超高額の年俸を受け取るスーパースター軍団を新米監督ジダンがどのようにコントロールしているのか、そしてどのようなプレーを見せているのか、その答えがこの記事に載っています。
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