サッカー日本代表が不振に陥っています。
憂慮せざるをえないのは、A代表とU-23と両方のチームの状況が非常に深刻な状況だからです。
言うまでもなく、現在のその両方チームで指揮を執っているのが、森保一監督。
森保一が就任してからのサッカー日本代表は、なかなかチームとしての発展・成長を示すことができていません。
このままでは2020年の7月に開幕を控えた東京オリンピックで、サッカー日本代表は間違いなく惨敗するでしょう。
「優勝」を目標に掲げていながら、自国開催でのオリンピックでのグループリーグ敗退は絶対に避けなければなりません。
そこで取り沙汰されているのが森保一監督の解任。
しかし、森保一監督には解任されない理由があるのです。
今回はなぜ、森保一はサッカー日本代表監督を解任されないのか?”
その理由をお伝えします。
なぜ、森保一はサッカー日本代表監督に就任したのか?
森保一は2018年7月にサッカー日本代表のA代表とU-23の両チームの監督に就任しました。
JFAの田嶋幸三会長によると、日本人監督としてはずば抜けた指導者としての実績をもっているから、というのが就任の理由です。
2004年に指導者としてのキャリアをスタートさせた森保一。
サッカー日本代表のA代表やアンダー世代のコーチを務めてきましたが、最も代表的な成果は2012年から2017年の5年間務めたサンフレッチェ広島での指揮です。
この5年間でJリーグを3度制覇し、クラブワールドカップでは3位という望外の成績を収めています。
ともすればJ1とJ2を行ったり来たりしていたサンフレッチェを常勝チームにまで引き上げた手腕をJFAは高く評価したということになります。
しかし、JFAが森保一をサッカー日本代表の監督に選んだのは、その実績だけが理由ではありません。
「改革」よりも「御しやすさ」。田嶋幸三が森保一を選ぶに至った教訓
それはヴァヒド・ハリルホジッチ政権時代のJFAの失策です。
選手達が好むスタイルではなく、自身が標榜するカウンターサッカーをチームに浸透させようとしていたハリルホジッチは、2018年4月にJFAが自ら選手達に監督としてのハリルホジッチをどう評価するか聞き取り調査を敢行して、解任への外堀を埋め、実行しました。
JFAの体勢批判や本田圭佑ら影響力のあるベテランを排除しようしたハリルホジッチを御せないと考えたJFAの、ワールドカップ開幕を一ヶ月前に控えた荒治療でした。
ロシアワールドカップではベスト16という最低限の結果を残したものの、下手をすればJFAの信用やサッカー人気に関わる重大な失策を犯すところだったのです。
ハリルホジッチはその後、自身の解任の不当性を主張する会見を行い、JFAとの溝があったことが明らかになりました。
そして、ロシアワールドカップ後の森保一監督就任である。
田嶋幸三JFA会長はハリルホジッチ政権時代の失策を教訓として、より御しやすい日本人監督の就任を望み、それが森保一でした。
その森保一政権は現在非常に強い逆風に晒されています。
なぜ、森保一監督は批判されるのか?
森保一のA代表とU-23での戦績は以下の通りです。
A代表:28戦19勝3分6敗
U-23:12戦8勝4敗
※いずれも2020年1月14日時点
結果だけを見るなら充分に納得することができます。
ただし、勝利を掴んだのはいずれも親善試合で、しかも相手は東アジアや中東の小国で、より重要性の高いアジア杯でのカタール戦(決勝)、コパ・アメリカでのチリ戦(グループリーグ初戦)はどはほとんど何もできないまま終えています。
もちろんそこに「世代交代を見据えた若手の登用」や「戦術の浸透・深化」など明確な意図があれば問題はないでしょう。
ただし、結果以外の部分にもサポーターは多いに不満を溜め込み、それは森保一監督解任論の気運は高まりつつあるのです。
サポーターは森保一監督の何に不満を抱えているのでしょうか?
森保一監督が批判される理由①戦術
森保一がサッカー日本代表の監督になってから、全く見えてこないのが「どのような戦術を採用するのか?」という部分です。
ポゼッションを基本としたサイドアタックなのか、それともまずはディフェンスから入るカウンターサッカーなのか。
監督としての森保一は選手の自主性を重んじる指揮官です。

細かな選手間のポジションチェンジ等の修正点にはいちいち口を出さずに黙認します。
ただし、その森保一監督のやり方に戸惑いを隠せない選手達がいます。
それはチームとゲームをコントロールする中盤の選手たち-とりわけボランチの-です。
曖昧な言葉が選手にミスを誘発させる原因だ。
主に最終ラインを高く保って、ボランチとのパス交換によりポゼッションを安定させるのが、現在のサッカー日本代表とU-23チームの約束事となっています。
ただし、そこから先をどうするのかがはっきりしない。
先のシリア戦では、パスの出しどころを失って行き詰りながらも孤軍奮闘する齊藤未月の姿があまりにも痛々しかった。
サイドを中心に攻めるのか、それとも前線の選手が中盤に降りてきてそこに展開していくのか。
この局面でボランチの選手に迷いが生じた結果、パスのテンポは単調になり、攻撃が遅れ、バックパスの山を築いています。
この問題について、顕著なデータがあります。
東京オリンピックのアジア予選(U-23サッカー日本代表は、開催国のため結果に関わらず出場権を確保)のグループリーグ初戦のサウジアラビア戦である。
この試合、U-23サッカー日本代表は実に66%ボールを支配し、567本のパスを回して、その内の84%を成功させました。
ただし、シュートの本数は11本で、その内の枠内が3本。
対してサウジアラビアがわずか34%のボール支配率ながら8本のシュートを放ち、4つを枠内に収めました。
U-23サッカー日本代表がいただけないのは後半40分の致命的ミスでしょう。
DF古賀太陽がDF岡崎慎にバックパスしたが意図が合わず、サウジアラビアFWブライカーンに奪われると、岡崎がファールでPKを献上。
これをMFガリーブに決められて敗戦を喫しました。
この連携ミスについて、岡崎はこう振り返っています。
自分的には太陽からサコ(大迫)に目が合っていると思った。パススピードが緩かったので、『自分かな』と思ったけど、球筋がサコの方だった
一方の古賀は、
僕としてはマコ(岡崎)に出したつもりだった
ボランチと最終ラインによるボール回しの次の展開を共有しなかったことで、最終ラインでの横パスとバックパスが増えた結果招いた致命的ミスでした。
森保一監督はサウジアラビア戦の後、以下のようなコメントを残しています。
難しい試合になると思っていたが先制されて追いつき、そこから支配して勝利に持っていければよかったが、連係のミスが出て痛い敗戦になった
「支配して勝利する」
森保一監督はこう語ったが、66%というボール支配率が示す通り、ボールを支配するところまでは成功しました。
ただし、サウジアラビアのロングカウンターが良く機能して効率的に攻めて得点を奪ったことを考えると、ゲームを支配していたのは明らかに彼らだったのです。
つまり、森保一は監督としての力量でサウジアラビアに完全に劣っていました。
森保一監督が言う「支配して」というのが、ボールのことなのか試合のことなのかはわかりませんが、こうした曖昧な表現が選手を戸惑わせているのは間違いないでしょう。
森保一監督批判はこれだけではありません。
森保一監督が批判される理由②選手をモチベートできていない
同じく東京オリンピックのアジア予選のシリア戦(1-2●)での選手の言葉にも、森保一の監督としての問題点は顕在化しているように見えます。
以下は広島MF松本泰志のコメントです。
(相手が)死に物狂いで来ましたし、その熱量は結果を見れば相手が上だったと思う。チームとしても個人としても、勝ちに対する気持ちや実力が伴わなかったと思う
U-23サッカー日本代表は、7月に自国開催のオリンピックというビッグイベントが控えています。
すでに本戦への切符は手に入れているとはいえ、少々信じられないモチベーションの低さだと言えるでしょう。
海外組がハーツ(スコットランド)の食野亮太郎しか招集されておらず、テスト的な側面が強い大会とは言えども、自国開催のオリンピックでのメンバー入りという目標に向かって選手達を鼓舞できなかった森保一監督のモチベーターとしての手腕には大いに疑問が残るのです。
中2日というスケジュールの中で行われ、かつ温暖多湿という東京オリンピックのプレ大会としては理想的な環境で、その状況を経験しているのはメンバー選考上、間違いなくメリットになるとは思われますが、選手たちにはどこか「どうせ本大会には呼ばれない」という思いがあったのかもしれません。
森保一監督が批判される理由③何のチームなのかはっきりしない
兼任という特殊な立場からなのか、そのチームがカタールワールドカップ予選を戦うA代表チームなのか、それとも東京オリンピックを目指すU-23チームなのか、はっきりしないのも批判の原因となっています。

2019年のコパ・アメリカではDF板倉混やFW上田絢世ら東京オリンピック世代のメンバーを重用する一方で、GKには大ベテランの川島永嗣を召集。
さらに2019年12月に行われたE-1(東アジア)サッカー選手権でも同様に繰り返され、DF佐々木翔や三浦弦太ら中堅・ベテランに東京オリンピック世代をミックスしたメンバーを編成で戦っています。
これでは選手間の連携は深まらないし、何より深めても意味がないのである。
そんな状況で、東京オリンピック開幕を半年強に控えて本番モードに突入しつつある選手たちを批判するのはあまりにも酷というものです。
森保一監督が批判される理由④選手選考基準がはっきりしない
選手の選考基準がはっきりしないのも森保一監督が批判される理由です。
特に重用されているDF佐々木翔とFW上田絢世は正直なところ、なぜ召集されているのかわからないレベルだと言って良いでしょう。
佐々木はサンフレッチェ時代の師弟関係ということもあって、素早く組織を浸透させるために召集しているのかもしれませんが、先のE-1サッカー選手権ではミスを連発。
さらにキャプテンという大役を任されながら、相手や審判との駆け引きも実に稚拙でした。
印象的だったのは、初戦の中国戦。
MF橋岡大樹が中国のジャン・ジーポンに頭部にスパイク裏でキックを見舞われたのに対して、佐々木は何の抗議も行わずにスルー。
どう見てもレッドカードが相応しいプレーでしたが、キャプテンとしての限界も伺える場面でした。
上田は2019年のコパ・アメリカのチリ戦とE-1サッカー選手権の中国戦で多くのチャンスを得ながら不発に終わりました。
一方で香港戦でハットトリックと結果を残した小川航基には次のチャンスを与えずに、優勝が決まる韓国戦でベンチに座らせるという変更采配を見せています。
現時点で全く結果が残せていない両者が重用されるのは、戦術的な観点からなのでしょうか?
森保一監督が批判される理由⑤交代が遅い
戦局を変えるのに選手交代は効果的な策の一つです。
ただし、森保一監督の場合は交代策が極端に遅い点が評価を下げています。
先のサウジアラビア戦では1点ビハインドながら、ロスタイムに突入してからMF相馬勇紀とFW田川亨介を投入するという愚策に出ています。
リードを奪われている方がロスタイムに突入してから選手交代など、相手に喜ばれるだけ。
しかもそれまで2枚も交代枠を残していたのだから、多くのサポーターが目を疑ったに違いないでしょう。
E-1サッカー選手権の韓国戦では79分で、シリア戦でも最後のカードを切ったのは86分でした。
こんなに短いプレー時間ではよっぽどのことがない限り、交代出場した選手が結果を残すことはできないし、シリア戦では序盤からフルスロットルで走り回って足が止まっていた相馬勇紀を代えずに左サイドが機能不全になるという問題点を解決できていないのです。
ここまで書いてきたように、森保一監督の評価は大きく下落しています。
森保一監督進退についてJFAが調査!それでも解任されない理由!
深刻な成績不振に陥る中、森保一監督の身辺は騒がしくなりつつあります。
JFAは今月中に技術委員会を招集し、森保一監督の進退について検討するようです。
シリア戦後に行われた選手のみのミーティングでは杉岡からは上層部も含めたJFAの体制に対して以下のような辛辣な意見が出ています。
活動ごとに一からの積み上げになりかけている部分があった。選手たちの中でも積み上げていかないといけないものはある
これまで森保一監督政権下のサッカー日本代表に対して寛大な態度を示していた田嶋会長も、
五輪の後はW杯の最終予選もあるので、そこも含めて考えないといけない。さまざまなことについて森保とも個人的に話したいと思っている
と、含みのあるコメントを残しています。
サッカー日本代表のサポーターにとって森保一監督解任待望論は根強いですが、恐らく続投となるではないだろうか。
関塚技術委員長は以下のようなコメントを残しています。
間違った戦い方をしているとは思っていない
次にどういうふうに向けていくかということは、現場を含めてしっかりと僕自身が話し合いを持ちながら、強化、あるいは技術委員会の方々としっかりともう一回その方向性を考えたい
とあくまで「話し合う」意向です。
言うまでもなく、優勝を目標に掲げてきた東京オリンピックで結果が残せなければ、JFAによるこの2年間は完全なる失策ということになるし、A代表にも影響することは間違いないでしょう。
しかし、ハリルホジッチの時もそうだったように都合が悪くなれば選手や監督に責任を押し付けるのがJFAの体質だからです。
今回はなぜ森保一サッカー日本代表監督が解任されないか、についてお伝えしました。

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