香川真司は天才です。常に自分が該当する世代とは一つから二つ上の世代の代表チームでプレーしてきました。世界にもそんな選手はいます。そんな彼らだからこそ経験できないある大会があります。
その大会、あなたはわかりますか?それはオリンピックです。オリンピックの男子サッカーは基本的にU-23の代表選手が参加します。そして、オリンピックでは例外的にオーバーエイジといわれる23歳以上の選手が参加します。登録人数は18人。このオリンピックならではの特別なルールは香川真司のような天才といわれるプレーヤーにとっては、ある意味で高い壁となるのです。本日はそんなオリンピックのからくりと香川真司のオリンピックでの戦いについてお伝えします。これを読めば、あなたは香川真司の凄さがわかると思います。
オリンピックはU-23世代の頂上決戦
オリンピックは夏冬に別れて、それぞれ2年に一度行われる世界最高のスポーツの祭典の一つです。冬の大会はスキーやスケートが大きな盛り上がりを見せます。特に日本ではフィギアスケートが凄まじい人気と視聴率を誇りますよね。荒川静香や安藤美姫、浅田真央らの演技に国民の多くが注目していました。特に2014年に行われたソチ大会では浅田真央が悲願の優勝を目指した一世一代の挑戦に国民は固唾を飲んで見守りました。そして夏は陸上やサッカーが大きな注目を集めます。北京では女子ソフトボールチームが戦力的な格差を乗り越えて、世界一に輝きました。また、バレーも日本人にとってはすっかり伝統的なスポーツの仲間入りを果たした感がありますよね。
そして、2016年にはブラジルのリオで夏のオリンピックが開催されます。サッカー日本代表U-23チームはすでにアジア予選で韓国を破り、出場を決めています。いよいよオリンピック本番が近づいてきて、
「オーバーエイジは誰になるのか?」
ということで大きな議論を呼んでいます。オリンピックで監督を務める手倉森監督は「対戦相手も決まっていないのに、オーバーエイジを選定するところまでいっていない」と加熱する報道陣を牽制しています。噂によると本田圭佑や長友佑都の名前が挙がっていますが、果たして…
日本代表にとっては前回のロンドンオリンピックのベスト4という成績を超えるよう期待されています。何故、オリンピックにこのような大きな期待が寄せられるのでしょうか?
それは、オリンピックがU-23世代のワールドカップと言えるほどの大会だからです。若手にとってはオリンピックで優勝することはワールドカップで優勝することと同じ意味を持つのです。
開催国ブラジルも悲願の優勝へ向けて本気モード
開催国ブラジルは未だにオリンピックで優勝したことがありません。ワールドカップでは5度の優勝を誇るのですが、なぜかオリンピックとセレソン(ブラジル代表の愛称)の相性は全くと言っていいほど良くないのです。開催国として迎える2016年のオリンピックでは、A代表のエースでキャプテンのネイマールの召集が噂されるほどブラジルはオリンピックに向けて本気モードで臨んできます。
香川真司はオリンピックに出場したのか?
香川真司ファンならすでに感じているかもしれませんが、香川真司はオリンピックに出場したことがあるのでしょうか?2008年の北京オリンピックでの中心選手は若き日の本田圭佑らでした。2012年のロンドンオリンピックでは清武弘嗣や永井謙佑が中心選手としての責務を果たしました。それでは香川真司はオリンピックに出場したのでしょうか?
結論から言うと香川真司はオリンピックに出場しています。しかも出場したのは2008年の北京大会に若干19歳で参加しているのです。本来香川真司は2012年のロンドンの世代なのですが、常に世代別代表において飛び級をしていた香川真司は2008年の大会に最年少で参戦していたのです。さらに言うと、この年にはA代表にもデビューしています。香川真司、恐るべき才能です。ちなみに香川真司の他に飛び級での北京オリンピック参戦を果たしたのは、吉田麻也、内田篤人、森本貴幸などがいます。本来ロンドンに参戦する予定だった世代は非常に優秀だったのです。逆に本田圭佑や長友佑都、細貝萌といった選手はもちろん選手としては優秀で期待されてはいたのですが、特別抜きん出た才能は持っていないというのが、一般的な評価だったのです。本田圭佑にいたっては、この時は左サイドバックで起用されるなど、本来のポジションではないところで使われているのです。現在のような絶対的な立場を手にした姿からは想像もできない境遇にこの金髪のレフティは立たされていました。
香川真司のオリンピックの成績
日本代表は予選リーグでグループBに割り振られました。このグループにはヨーロッパからオランダ、アフリカきらナイジェリア、そして北中米からはアメリカが選ばれました。育成に定評があるオランダと若年層の国際大会では抜群の実績を誇るナイジェリアとの対戦は避けたいところでしたが、日本はアメリカも含めた難しい組で北京でのオリンピックを戦うことになりました。
そしてオリンピックでのグループリーグ第1戦日本はアメリカと相見えました。アメリカとはシドニーオリンピックでも戦っており、その時はPK戦の末日本代表が破れていました。この試合、大方の予想を覆して香川真司は先発出場しました。ポジションはトップ下を任されています。この時香川真司はまだ19歳でした。香川真司は自慢のドリブルとパスで時々見せ場を作り出しましたが、相手は一世代上の代表選手たち。活躍は散発的でほぼ完全にアメリカ守備陣に抑え込まれました。試合はプレミアリーグなどで活躍したアメリカの司令塔MFスチュアート・ホールデンのゴールでアメリカが先制すると、このゴールを守りきり、アメリカが勝利しました。香川真司は後半84分に岡崎慎司との交代でオリンピックのピッチを後にしています。日本は強国との対戦が控えている大切な初戦でまさかの完封負けを喫し、反町ジャパンの船出と香川真司のオリンピック初戦は厳しい結果でのスタートとなりました。
強国との対戦
そして第2戦はオランダと引き分けていたナイジェリアと対戦。この試合でも香川真司は先発しています。この試合は終始ナイジェリアペースでした。圧倒的な身体能力で日本を自陣に押し込んでいたナイジェリアは後半に先制すると香川真司がピッチを後にした直後に決定的な2点目を挙げました。そして、その後日本代表はなんとか豊田陽平のゴールで食らいつきましたが、反撃もここまで。2連敗でオリンピックからの敗退が決まってしまいました。
そして、2引き分けという厳しい状況で勝利が勝ち抜けへの絶対条件となるオランダと対戦。オリンピック3戦目の香川真司は初めてベンチからのスタートとなりました。対するオランダはFWロイ・マカーイ、FWライアン・バベルなどが先発しました。豪華メンバーで日本戦に挑んできました。日本代表は追い込まれたオランダに終始攻め込まれる厳しい戦いでオリンピック3戦目を推移させていきます。そして、後半にはオーバーエイジとして召集されていたFWヘラルド・シボンにPKを決められ万事休す。香川真司は後半35分に途中出場しましたが、見せ場を作るには至らず。日本代表の北京オリンピックは3戦全敗という成績で終わりました。
香川真司のオリンピックは終戦
香川真司の19歳で迎えた初めてのオリンピックは3戦全敗という厳しい結果で終わりました。クジ運もよくありませんでしたが、選手たちがほとんど本来のパフォーマンスを見せることができず、押し込まれる展開が常に続いていました。ただでさえこの大会はオーバーエイジを招集しておらず、一方で対戦相手たちはオーバーエイジを招集していました。香川真司のオリンピックは年齢的に一回り以上上の選手とのマッチアップを強いられていたのです。
香川真司がオリンピックに出場しなかったと認識されている理由としてはあまり、北京オリンピックの世代自体が大きな期待を寄せられておらず、また香川真司も飛び抜けて若かったこともあり、その他大勢の一人として扱われていたことなどが挙げられます。注目されていたのは内田篤人や梶山といった選手たちでした。
香川真司は2012年のロンドンオリンピックへの出場権を年齢的に有していましたが、マンチェスターユナイテッドがリーグ戦への影響を考慮してオリンピック代表への招集を拒否したという経緯があります。このロンドンオリンピックはイギリスが初めてイギリス代表として参戦した歴史的な大会でマンチェスターユナイテッドのFWライアン・ギグスが初めて代表選手として国際大会の舞台に立ちました。また、決勝は個人の力で圧倒的に勝るブラジルを、組織力で対抗したメキシコが下して優勝を果たしており、またもブラジルの悲願は叶いませんでした。
北京オリンピックはメッシやアグエロ、ディ・マリアなどの豪華メンバーを擁したアルゼンチンが決勝でナイジェリアを下して優勝。準決勝では宿敵ブラジルを3-0という圧倒的なスコアで下しています。まさしく黄金世代が額面通りの活躍を見せたアルゼンチン。この北京オリンピックの世代を中心としたチームがワールドカップの決勝の舞台に立ったわけですから、いかに優秀な世代だったかがわかります。
アルゼンチンはオリンピックとの相性が抜群!
この北京オリンピックで優勝を飾ったアルゼンチンは、実は2004年に行われたアテネオリンピックでも優勝を果たしており、この大会との相性が抜群です。このアテネオリンピックにはテベスなどが出場し、史上初の無失点優勝という快挙を達成しています。アルゼンチンすごい!
総括~香川真司とオリンピック~
本日は香川真司とオリンピックについてお伝えしました。オリンピックには出場していないと思われていた香川真司ですが、実は本来出場すべき大会よりも一世代上の選手たちが年に出場しており、あまりフォーカスされなかったというのが真実でした。香川真司のような一握りの天才は時に一世代上のタイミングでオリンピックに出場することがあり、それは内田篤人にも言えることです。内田篤人は既にオリンピックチームのスタメンであり、A代表でも主力の1人でした。既に18歳の時にはA代表に招集されていた香川真司は、オリンピックでの失敗という形で、皮肉にも自身の才能の大きさを示してしまったわけです。できれば4位に輝いたロンドンオリンピックで輝くこの小柄なMFの姿が見たかったのですが…リオオリンピックに望む日本代表のオーバーエイジ候補としては本田圭佑や長友佑都の名前が上げられています。果たして香川真司の招集は実現するのでしょうか?
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